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CNCフライスを作ってみる

編集: 2018/02/23

CNCフライスは、“自作”、”CNC”などで検索すると中国製のキットや小型の汎用フライスをCNC化している例が多いですが、長野県岡谷市の株式会社オリジナルマインド
から、まさにオリジナルの数種類のキットが出ています。国産キットは、この会社だけと思います。

同社でキット、コントローラ、Mach3などのソフト(ライセンス代行)、工具など必要なものを購入すればすぐにでも何か作ることができ、サポートも対応が丁寧です。さらに、材料、工具、部品なども販売していて、自作ユーザーにはありがたい存在で、いろいろ購入したものは順次紹介します。

また、自作自慢の掲示板 というサイトを参考にさせてもらっています。
中身は「自作自慢の掲示板!」「挨拶雑談掲示板!」「何でも質問掲示板!」の三つに分かれています。厳密な区分はありませんが、質問やこんなの作りましたというようなことを投稿すれば、いろいろヒントをもらったりできます。
特定のソフトやメーカーに偏らず、汎用フライスをCNC化したユーザーも多く気軽に投稿できるのでお勧めです。投稿された内容からいろんな発見があり、運営されている方にはとても感謝しています。

もう一つ、たまたま近くにあったのが幸運だったんですが、ねじの松喜という会社があります。一般的なボルト、ネジ、ピンなどはたいがい在庫していて、1本(!)から買えます。特殊なものは取り寄せてもらえて、家人の勤める会社に頼まれた銘板用のパーカーリベットも翌日には手に入りました。
ホームセンターなどでは数本単位で価格も高く、欲しいものがないことも多いので、ありがたい存在です。

私はメカの技術屋だったので、退職を機にCNCフライスを自分で設計・製作してみようと思いついたのが始まりで、削るものをあとから考えるという変わった(?)方向で始めました。
作り始めて数年は、設計変更した部品を加工して現在の部品と入れ替えるという、何十年も前に学校で習った「工作機械の歴史」をなぞるようなことを繰り返して楽しんでいました。

最初は下のようなMDF材で作ったペラペラのもので、単にXYZがプログラム通りに動くという程度のものです。ボールペンを付けて、四角や円など入力した形が描かれた時は嬉しかったのを覚えています。
寸法がきっちり出ているのと表面が滑らかなのでMDFを使い始めたんですが、早い話がとても分厚い紙(!)なので、剛性というのは全く期待できません。

スピンドルは、マブチモーターの一番大きいのをタイミングベルトで減速しています。

減速にはタイミングベルトやVプーリーなどいろいろ作ってみましたが、どうしても音が大きくて長く苦労しました。今は、高トルクのDCモータ(eBayで購入)を直結することで解決しています。

余談ですが、モータ軸にコレットチャックを直結したものがブラケット付きでeBayなどにたくさん出ていますが、モータ軸のベアリングは軸方向の遊びが大きいので細かい加工には使えません。

 スピンドルは近くの鉄工所で作ってもらったもので、エンドミルなどを押しネジで固定するものです(6mmシャンク限定)。送りネジはM6寸切、ガイドはアルミアングル(アルマイト仕上)でMDF材を直接押さえています。
このころは、アルミを削るのに 切り込み 0.05mm 送り80mm/min くらいで、切削量は現在の1/100くらいでしょうか。ただ、送り寸法は結構正確で、ボルト穴やタップ下穴はセンタードリルで開けておいて、ボール盤でドリルを通せばきっちり合いました。

第2世代(?)として、本体フレームをアルミ板で作り直し、各軸の送りガイドはテフロン板を組み込んだものにしています (下の写真の赤丸の部分)。
スピンドルモータの減速や送りネジはMDF時代と変わっていません。スピンドルもベアリング剥き出しの簡単なもので、今から見るとよく削れてたな〜という思いです。

現在では、送りガイドをリニアガイド(Z軸を除く)に、スピンドルをER11コレットチャックに、送りネジを台形ネジ(Z軸を除く)になど、各部を変更・改良してきましたが、今に至るまで全体の構成は変わっていません。

アルミ合金なので残念ながら鉄鋼材料は削れませんが、アルミ材およびアクリルなどの樹脂材料はそこそこの加工ができるようになりました。

キットではなく、自分で考えて作ったCNCフライスについて、順不同ですがボチボチと書き綴っていきます。

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CNCフライスの構成

編集: 2018/02/15

全体の構成

CAD、CAM
 CAD: LemkeSoft: CADintosh (MacBookPro)
CAM: Vectric: VCarvePhotoVCarve (WindowsXP)

コントローラ
 Mach3 R 3.043.062 (WindowsXPデスクトップ、Mach3はパラレルポートが必要)
CADからのDXFデータ受け渡しはUSBメモリ

ブレークアウトボード (BOB)
 HobbyCNC PRO 4Axisを使用
センサ入力やスピンドルON/OFFなど信号入出力の外部回路は自作

ステッピングモータ
 XY軸:日本電産サーボ KH56KM2-901
 Z軸:オリジナルマインド 42mm(型番なし)
いずれも2相ユニポーラ

リミットスイッチ
 X、Yのホームポジションのみに透過型フォトセンサ取り付け

スピンドル
 ER11コレットチャック
DCモータ直結 約6,000RPM (回転数検出に反射型フォトセンサ取り付け)

電源
 ブレークアウトボード: スイッチングレギュレータ24VDC/150W
スピンドルモータ: 同仕様 (別系統)

大まかに分けると上のようになり、順序が前後するかもしれませんが詳しく書いていきます。

各ページの内容を予告なく(!?)修正することがありますので、ご了承ください。

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CAD/CAM

編集: 2018/02/27 11:40

CAD
使いやすいものを選べばいいですが、私はCADintoshを使っています。
ドイツのベンダーですが、GraphicConverterなど数種類のMac用ソフトを出しています。このソフトは、仕事で使っていたUNIXベースのCADと操作が殆ど同じなので、全く違和感なく使えています。
インストールしたMacOSを日本語で使っていれば、完全ではありませんが、表示は日本語になります。
ちょっとしたバグがあっても、問題点を指摘すれば確実に対応してくれます。

WindowsのCADもトライアル版でいくつか見ましたが、私には使えませんでした。
いずれにしろ、いろいろチェックしてCAMが読み込めるデータを書き出すことができればOKです。

Fusion360という3D-CAD(CAM機能もあり?)がほとんどフリーで使えるようで、こういったホームページの図なんかもカッコよくなると思いますが、残念ながら使えていません。

CAM
最初の1年くらいは、Mach3でなくTurboCNCというコントローラ(MS-DOS)を使っていたのですが、Gコードは手打ちで入力して結構勉強になりました。
Loop文が使えてGコードファイルが小さくなり、確認も楽でした。TurboCNCはまだまだユーザーがおられるようです。

Mach3を購入してしばらくは、付属のLazyCam Betaというなんとも恐ろしい名前(lazy & beta !)のCAMソフトを使っていました。付属してくる状態では機能が不十分でライセンスを購入しましたが、たまにおかしな結果を出すことに注意すれば結構使えました。

その後、 Vectric の Cut2D を使っていましたが、加工条件の設定などがより幅広い VCarvePro へ乗り換えキャンペーンを利用して変更しました。
日本語にも対応していてインストール時に選択できますが、よくできたソフトだと思います。文字彫刻など、ビットさえ用意すれば、いろいろな加工ができる優れものです。
ライセンス料が今では結構高くなってしまいましたが、Pro版に加工範囲の制限(600×600まで)など少し機能を落としたVCarve Desktopというのもあります。

全てのソフトでビデオチュートリアル(英語のみ)がとても充実していて、英語が理解できなくても画面を見ているだけで分かりやすいです。
ユーザーフォーラムもいろいろあって、ちょっとした疑問があっても検索できて便利です。とんでもない質問も見かけますが、ちゃんと多くのユーザーがヒントを書き込んでくれています。これはMach3でも同じで、私も2、3回質問して教えてもらいました。

同社のPhotoVCarveというリトフェインができるソフトも使っています。
リトフェインというのは写真などからデータを生成して、コーリアン(Corian®)などの4mm程度の板の表面を浮き彫り状に加工し、背面からの光で絵が浮き出るものです。
精細に加工するには1mmとかの細いボールエンドミルを使うので、ハガキサイズで7時間くらいかかることもありますが、誰かにプレゼントすると驚かれます。
カラーじゃないの?と言われたことがありますが、無理です。
リトフィンだけではなく、普通に浮き彫り加工できるので面白いソフトです。

なお、全てのVectricソフトは無償のトライアル版があります。

VCarveProとMach3はWindowsXPのデスクトップPCで動かしていますが、セキュリティーの問題があるのでネットには接続せず、CADintoshからのデータの受け渡しはUSBメモリです。WiFi接続するのは、アップデートをチェックする時だけです。

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ブレークアウトボード (BOB)

編集: 2018/03/11

Mach3の信号を受けて、ステッピングモータを駆動しリミットスイッチやフォトセンサなどの信号入力、スピンドルON/OFFの信号出力を処理するのがブレークアウトボードで、HobbyCNC PRO 4Axis キットを購入(部品は3軸分だけ)、半田付けして組み立てたものを使っています。
4軸全部のキットや、ステッピングモータを含めたセットもあります。
いったん販売を停止していたようですが、最近は完成品も売っていて、ユーザーフォーラムもあり、サポートはとても良いです。

キットを注文すると、下のような生基板と、必要なIC、コンデンサ、端子台などが送られてきます。

組み立ての順に写真付きで、英語ですが、とても分かりやすい説明があります。

説明通りに組んで半田付けを完了すると、このように完成です。
この後、ドライバICの放熱板(t3アルミ板)と、24V出力を利用して小さな冷却ファンを追加しています。(X、Yのステッピングモータが3Aのため)
ユニポーラ、2/4相、5/6/8ケーブルのステッピングモータがコントロールできます。
マイクロステップは、1/1 1/2 1/4 1/8 1/16 のいずれかを設定できますが、できる限り小さくしておかないとトルクが落ちます。送りネジピッチ 2mmとして 200pulse/rev のモータであればフルステップで 0.01mm/pulse になるので、1/2か1/4にしておけば十分かと思います。
マイクロステップを細かくすると計算上の分解能は上がりますが、機構上の精度が良くなる訳ではないので、まず機械精度を上げておくことが重要です。

入出力用に 10 11 12 13 15 ピンのコネクタがあり、10KΩでプルアップされているので使いやすいです。私の場合は、Mach3 プリンタポートからのDSUB25ピンコネクタを、次のように接続しています。

 

Index pulse (15pin – IN) : 反射型光電センサを使ってスピンドル回転数検出、表示
Tool Touch (13pin – IN): Tool Change のプレート側へ接続
Spindle ON/OFF (1pin – OUT): リレーを経由してスピンドルモータのオンオフ

Mach3側の Config – Ports & Pins – Input Signals の設定


Config – Ports & Pins – Motor Outputs の設定

最初は HobbyCNC EZ ($54)という3軸のものを6年以上使っていましたが、今は予備として置いてあります。
4Axisと言っても、アップグレードキットを買えば4軸にできるということです。

EZとPROでは、StepとDirが逆なので、Mach3の設定変更が必要です。
入れ替えた時に、半田付けをミスしたのかとパニックになりました。

Mach3からの信号でスピンドルモータをON/OFFするリレー回路と、各軸のホーム位置センサ信号をMach3へ入力する回路は、基板を作って追加しました。

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